11月13日(北京時間)、Grayscaleはニューヨーク証券取引所でIPOを申請し、Grayscale Investment, Inc.を通じて米国市場での上場を目指しています。本IPOの主幹事証券会社はMorgan Stanley、BofA Securities、Jefferies、Cantorです。
GrayscaleはUp-C構造を採用しており、運営・支配会社であるGrayscale Operating, LLCは上場主体ではありません。新設のGrayscale Investment, Inc.が上場し、LLCの持分の一部を取得して公開取引を実現します。創業者や初期ステークホルダーはLLCの持分を上場会社の株式へ転換でき、キャピタルゲイン課税の恩恵を受け、個人所得税のみが課されます。対してIPO投資家は会社利益に対して法人税、配当所得に対して個人所得税が課されます。
税制上のメリットに加え、AB株式クラスにより上場後も絶対的な支配権を維持できます。S-1申請書にはGrayscaleが親会社DCGの完全子会社であることが記載されています。GrayscaleはIPO後もDCGが高議決権のClass B株式を100%保有し、主要事項の決定権を保持する方針です。IPOによる調達資金は全額LLC持分の取得に充てられます。
Grayscaleは、ビットコイン、イーサリアム投資商品の先駆者として広く知られており、SECとの長期的な交渉の末、ビットコイン、イーサリアム信託をスポットETFへ転換しました。Digital Large Cap Fundは「暗号版S&P 500」と呼ばれ、直近の強気相場ではファンドの銘柄入替ごとに該当トークン価格が短期的に大きく変動しました。

S-1申請書によると、9月30日(現地時間)時点でGrayscaleは350億ドルのAUM(運用資産残高)を運用し、世界最大の暗号資産運用会社です。同社は45種類以上の暗号資産を対象とした40以上のデジタル資産投資商品を提供しています。運用資産350億ドルのうち、339億ドルはETP(上場投資商品)・ETF(上場投資信託)(主にビットコイン、イーサリアム、ソラナ関連)、11億ドルはプライベートファンド(主にアルトコイン投資)です。

収益面では、Grayscaleの主力商品は、クローズドエンド信託で積み上げたAUM(運用資産残高)や業界平均を上回る管理報酬により、競合他社を上回る業績を示しています。

財務面では、2025年9月30日までの9ヶ月間でGrayscaleは約3億1,900万ドルの営業収益を計上し、前年同期比20%減少しました。営業費用は1億1,600万ドルで8.4%増加しました。営業利益は2億200万ドルで前年同期比30.4%減少を示しています。その他収益および税引き後純利益は約2億300万ドルで、前年同期比9.1%減少しました。平均AUM(運用資産残高)データからは昨年比でAUMが減少した可能性が示唆されます。

一過性項目を除く調整後純利益は約2億800万ドルで、純利益率は65.3%です。調整後純利益は前年同期比8.5%減少しましたが、利益率は前年の57.2%から改善しています。

Grayscaleのレバレッジ比率は健全です。収益・利益は減少していますが、資産価値は増加し、負債は減少、利益率も改善しており、着実な業績回復が見受けられます。
S-1申請書には成長戦略として、プライベートファンド(アルトコイン特化型含む)の拡充、ETF(上場投資信託)・ETP(上場投資商品)などパッシブ商品を補完するアクティブ運用型商品の展開、自社ファンド・暗号資産・その他資産への積極投資が記載されています。
販売面では、Grayscaleは総資産14兆2,000億ドルを管理する3証券会社とのデュー・デリジェンスを完了したと報告しています。今月、独立系大手ブローカーディーラーのプラットフォームで、運用・仲介資産が1兆ドル超、金融アドバイザーが1万7,500人超の同社にて、ビットコイン、イーサリアムの小型ETFをローンチしました。8月には6,700社のアドバイザリーファームが加盟するiCapital Networkと提携しました。これにより、同ネットワーク参加企業に対し、アクティブ運用戦略を通じてデジタル資産投資チャネルを提供します。
総じてGrayscaleの開示内容からは、投資商品の管理報酬を主要収益源とする安定した資産運用会社であり、予想外の上昇余地は限定的です。ただし、伝統的資産運用会社のIPO事例を踏まえると、Grayscaleの時価総額やP/E予測は比較的追跡しやすいです。そのため、投資対象として予見性の高い銘柄といえます。





