Gate Ventures 週間暗号資産レポート（2025年8月25日）

TL;DR

• Jerome Powellが金融政策の緩和シフトを示唆し、市場は2025年9月に25ベーシスポイントの利下げを織り込んでいます。
• 今週は米国のGDP、コアPCE、耐久財受注、新築住宅販売、消費者信頼感、個人所得・支出など主要経済指標が発表されます。
• ETHはBTCをアウトパフォームし、Powellの利下げ示唆とETF資金流入が背景に史上最高値を更新。BTCは資金流出が続き伸び悩みました。
• BTC・ETHを除く市場は上昇。ETH関連DeFiトークン（Aaveなど）が大幅に上昇しました。
• OKBはX layerでのミーム取引活発化により70%以上急騰、TONは4%下落。
• WLFI・Plasmaなど新規トークンはTGE前から好調、Plasmaのプレセールは30分未満で完売。
• AaveはAptosへの初の非EVM展開を実施、レンディングプロトコルの拡充。
• ChainlinkはオラクルサービスでISO 27001・SOC 2取得、資産確保総額（TVS）は900億ドル超を達成。
• USDeは新しい適格資産枠組みのもとBNBを裏付け資産に追加し、BTC・ETH以外の資産も拡充。
• データ分野が最大の資金調達となりました。

マクロ概況

Jerome Powellが金融政策の転換を示唆し、市場は2025年9月に25ベーシスポイント利下げを織り込んでいます。

2025年のジャクソンホール経済シンポジウムでFRB議長Jerome Powellは、複雑化する経済状況下で金融緩和の可能性を示唆する演説を行いました。表立った利下げは明言しなかったものの、市場は9月の25ベーシスポイント利下げの強いサインと解釈しています。コアPCEインフレは2.9%へ上昇、物価の伸びが顕著です。Powellは関税が消費者物価に与える影響を認め、最大の課題はこれらの上昇がインフレを定着させるかどうかにあると述べました。

こうしたリスクを受け、FRBは政策枠組みに大きな調整を加えました。Powellは、従来の柔軟なインフレ目標への回帰を発表。近年の経験から意図的なインフレ目標超過が有効に機能しないことが判明しています。特に急激かつ持続するインフレ環境下では従来型政策の再評価が不可欠です。この転換は単なる技術修正ではなく、FRBのコミュニケーション戦略の見直しでもあります。

今週発表予定の主要米経済指標はGDP、コアPCE、耐久財受注、新築住宅販売、消費者信頼感、個人所得・支出です。米国は2025年第2四半期GDP（初回3.0%）の更新を予定。7月のコアPCEも発表され、先行CPIは予想以下のヘッドライン2.7%上昇に留まりました。FRBが重視するインフレ指標の動向は9月会合の利下げ期待を左右し、市場は高い利下げ確率を織り込んでいます。他、耐久財受注、新築住宅販売、個人所得と支出も注目です。

DXY

ドル指数は先週金曜、Powellのハト派発言による金融政策転換期待で下落。投資家はFRBのマクロ経済に対するスタンス変更を見込んでいます。

米国10年債利回り

リスク資産への資金流入とともに、米国債10年利回りは大きく低下し約4.27%となりました。

金

金価格はPowellのハト派発言を受けて、早期利下げ期待と流動性増加により急騰しました。

暗号資産市場概況

1. 主要資産

BTC価格

ETH価格

ETH/BTC比率

SOL/ETH比率

EthereumはPowellがFRBの注力分野をインフレから雇用市場へシフトする発言をした直後に、史上最高値を突破。9月の利下げ観測が強まっています。

市場は流動性改善期待で明るいムードも、BTCは勢いを失い一時115,000ドル割れ。現物BTC ETFは先週11億7,000万ドルの資金流出が5日連続で発生。対して現物ETH ETFは2億4,100万ドル流出の後、8月21日から資金流入に転じて価格上昇、22日には流入加速となりました。

ETHはETF一次・二次市場からの買い需要が強く、BTCは米国株の先行指標となる可能性も。ETH/BTC比率はなお上昇余地があります。

2. 市場全体の時価総額

暗号資産市場全体時価総額

BTC・ETH除く暗号資産市場時価総額

市場全体の時価総額は週を通じ0.96%下落、BTC・ETH除く市場は0.55%上昇。ETH価格上昇がAaveなどDeFi・LSTトークンの成長を促進し、BTC下落を一部緩和。BTCラリーとの比較で、ETH高騰時はアルトコイン全般の上昇に広がりやすい傾向。BTCに集まりやすい流動性がETHやその関連アルトコインへシフトする可能性も指摘されています。

3. トップ30暗号資産のパフォーマンス

出典：Coingecko、Gate Ventures（2025年8月25日）

Aaveは直近の上昇を牽引し、8月25日時点で335ドル。ETH価格上昇がこの動きを後押しし、前回サイクル（2021年）はETH最高値更新時にAaveが650ドルを記録。ETHが今後さらに上昇すれば、DeFiトークン全体の強い上昇が続く可能性もあります。

一方TONは4%下落で最弱、8月初旬以降は3.14〜3.675ドルのレンジで推移しています。

前週の高騰に続き、OKBは先週も70%以上上昇。現完全希薄化後時価総額（FDV）は約39億ドルでBNBの30分の1規模。X layerではミーム関連プロジェクトが活発化し、ローンチパッドで9件の新規プロジェクトが開始。OKBはさらなる上昇余地があると見られます。

4. 新規トークンローンチ

今週の主なTGEはWLFIとPlasma。Trump関連DeFiプラットフォームWLFIは現在0.23ドル、パブリックセール価格の4.6倍。Plasmaは今回サイクル初のステーブルコインチェーンTGEとなり、プレTGE市場では0.54ドルで取引中。Bitfinex、Bybit、Framework Ventures支援の注目ブロックチェーンでステーブルコイン・決済分野に特化。2025年7月のプレセールは30分以内で完売、FDV5億ドルから現在53億ドルに成長しています。

主要暗号資産トピックス

1. Aave、Aptosで初の非EVMレンディングプロトコル展開

DeFi最大レンディングAaveは純預入500億ドル、TVL370億ドル超でAptosに初の非EVM展開。グローバルレンディング市場へのアクセス拡大の一環です。ローンチ時にはUSDC、USDT、APT、sUSDeに対応、Aptos財団によるインセンティブが導入されました。Chainlink価格フィードを統合しオラクルによる価格信頼性を確保。Aave V3をMoveで再実装。さらにGHO建て50万ドルのバグ報奨金も提供し、セキュリティ強化を図っています。

AaveとAptosは流動性ステーキング分野で大きな可能性を見ており、APTのLST比率は8.1%、直接ステークは76%と乖離。AaveはAptosの流動性エンジンとして、減少傾向だったユーザーアクティビティの再活性化も狙います。TVL成長、担保拡充、非EVM展開のモデルケースとして展開、Aave DAOガバナンスが管理します。

2. Chainlink、オラクルサービスでISO 27001・SOC 2取得、資産確保総額（TVS）900億ドル超を達成

Chainlinkはブロックチェーンオラクルで初のISO 27001認証、SOC 2 Type 1監査取得（Deloitte & Touche LLP監査）。対象は価格フィード、スマートデータ（プルーフ・オブ・リザーブ、NAV）、クロスチェーンインタ―オペラビリティプロトコル（CCIP）。Chainlinkは900億ドル超の資産確保総額、オラクル市場シェア68%。Aave、GMX、Ether.fi、Pendle、Compound等のDeFiや、Swift、UBS、SBI Digital Markets等の主要機関でも採用。

認証取得はChainlinkのエンタープライズ級セキュリティ・運用基準を証明、トークン化資産市場の基盤を強化します。CCIP（クロスチェーンデータ・価値転送）、価格フィード（リアルタイムデータ）、プルーフ・オブ・リザーブ（担保確認）、NAVLink（トークン化ファンド）などの認定サービスが対象。Chainlinkは次世代オンチェーン金融インフラとして、現実資産のトークン化が兆ドル規模で進む時代の基盤を担います。

3. USDe、BTC・ETH以外のBNBも裏付け資産に追加、新「適格資産枠組み」導入

EthenaはBinanceのBNBをUSDeのパーペチュアルヘッジ担保として初めて承認し、「適格資産枠組み（Eligible Asset Framework）」を導入。ルールベースで定量・ガバナンス基準を設け、BTC・ETH以外にもペグ維持資産を拡充できる構造です。リスク委員会はXRPやHyperliquidのHYPEが初期基準を満たすと確認し、追加候補に。USDe（Ethenaの合成ドル）はドル建資産＋デルタヘッジパーペチュアルポジションで安定性維持し、流通供給は117億5,000万ドル。ステーブルコインで第3位。

新枠組みで、大型流動性資産を一部ヘッジに参照可能にしつつ、主な裏付けは既存金融商品に依存。ガバナンスで評価プロセスを明示し、担保源拡充とリスクコントロール強化を両立します。

主要ベンチャー資金調達

1. o1.exchange、Base初の本格トレーディングターミナル構築へ420万ドル調達

o1.exchangeはCoinbase Ventures・AllianceDAO主導で420万ドル調達。Baseの取引インフラでも最大級。リアルタイムDEX分析、TradingView統合、ウォレットトラッキング、先進的注文（リミット/TWAP/スナイプ）、1ブロック執行でスリッページ最小化。マルチウォレット管理、クロスチェーンブリッジも対応。主要BaseプロジェクトやUniswap V4と連携し流動性と注文フローを強化。

採用促進策として、取引手数料45%キャッシュバック・紹介収益41%分配の高還元インセンティブを展開。これほどの報酬は中央・分散型でも珍しい水準。Baseエコシステムはミームトークン・NFTで急拡大も、成熟取引インフラが不足。o1.exchangeはプロ仕様ツールと強力インセンティブで初期の中央取引所戦略を再現し、Base最大の取引ハブ確立を目指しています。

2. VanEck・Fabric Ventures、Loop Cryptoのステーブルコイン決済インフラ開発へ600万ドル出資

Loop CryptoはVanEck・Fabric Ventures共同主導で600万ドル調達。ステーブルコイン決済インフラ強化へ。a16z CryptoやArchetypeなど既存支援も加わります。VanEckはステーブルコインの銀行業界変革への影響を強調し、Fabric Venturesはスケーラブルな決済向けブロックチェーンへのコミットを表明。

Loop Cryptoは国際送金でステーブルコインの利用を促進、従来仲介業者への依存度低減と決済のスピード・コスト効率を向上。ステーブルコインは企業・DeFi戦略の中核となり、Loop Cryptoの事業はデジタル化・包括的な決済インフラへの業界転換を象徴。企業と規制側がブロックチェーン決済の統合を探る流れの中、成長を加速しています。

3. DigiFT、SBI Holdings主導で1,100万ドル調達、RWAトークン化インフラ拡大

シンガポール拠点RWA取引所DigiFTはSBI Holdings主導で1,100万ドルの戦略調達、累計2,500万ドルに。Mirana Ventures、Offchain Labs、Yunqi Partners、Polygon Labsなどが参加。金融機関のRWAプラットフォーム信頼度が高まり、株式・債券・オルタナ・暗号資産など幅広いトークン化商品の拡大、スマートコントラクトインフラの高度化で相互運用性・資本効率を向上します。

DigiFTはシンガポール金融庁・香港証券先物委員会の認可ライセンス下、機関投資家向けトークン化資産導入ルート提供。Invesco、UBS Asset Management、CMB International、Wellington Management等とも提携し、トークン化と流通の一貫サービスを展開中です。

ベンチャー市場指標

前週の成立案件は16件、インフラが9件で全体の44%、データが6件（38%）、DeFiが3件（19%）。

週次ベンチャー資金調達概要　出典：Cryptorank、Gate Ventures（2025年8月25日）

前週の公開資金調達総額は1億4,800万ドル。案件の19%（3/16件）は調達額未公開。データ分野が1億900万ドルで最多。主な資金調達案件はIVIX（6,000万ドル）、DigiFT（1,100万ドル）。

週次ベンチャー資金調達概要　出典：Cryptorank、Gate Ventures（2025年8月25日）

2025年8月第4週の調達総額は1億4,800万ドルで前週比-42%。同期間の前年同期比では-3%減。

Gate Venturesについて

Gate VenturesはGateのベンチャーキャピタル部門として、分散型インフラ、ミドルウェア、Web 3.0時代の変革を牽引するアプリケーションへの投資事業を展開しています。グローバルな業界リーダーと連携し、社会・金融インタラクションを再定義するアイデア・技術力を有する有望なスタートアップやチームを支援しています。

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